1937年に出版され、今もなお多くの人に読み継がれている歴史的名著と言われる小説「君たちはどう生きるか」(漫画版、2018年発売)をご紹介します。
本書は、中学生の主人公が、学校生活や友人関係で起こる様々な出来事を通して、叔父さんに導かれながら成長していく話です。漫画の合間合間に主人公の考え方を補完する叔父の手紙があり、その手紙が中心になりますので活字は多めです。
著者:吉野源三郎
岩波少年文庫の創設に尽力した編集者・人文学者。雑誌「世界」初代編集長。1899年~1981年。
漫画:羽賀翔一
茨城県出身の漫画家。主な作品は「ケシゴムライフ」「ダムの日」「今日のコルク〜新人マンガ家のスケッチブック〜」「漫画・君たちはどう生きるか(原作:吉野源三郎)」「昼間のパパは光ってる」「友だちってなんだろう?(装丁画、著:齋藤孝)」
世の中は自分を中心に回っていない
コペルニクスのような発見をしたことからおじさんに「コペル君」と名付けられました。そのコペルニクスが唱えた地動説の考え方が本書の最大のテーマです。
コペルニクスが地動説を唱えたときは、天動説が常識と考えられていました。その後の学問の研究によって、この説が正しいことが証明され、現代においては、小学生でさえ地動説を簡単に理解しています。皆さんの人生にも、後から振り返ると間違った考え方だったと解ることが多々あるのではないでしょうか。いまの自分の常識にとらわれず、本質を考えてほしいというのがメッセージだと思います。
また、この地動説・天動説には、人間の考え方にも当てはまります。人間には、自分を中心に物事を考えたり、判断したりする天動説のような性質があります。このような考え方を捨て、世の中の本当のこと、大きな心理を理解していきましょう。
世の中を回している中心なんてもしかしたらないのかもしれない。太陽みたいにたった一つの大きな存在が世の中を回しているのではなくて、誰かのためにっていう小さな意志がひとつひとつつながって僕たちの生きる世界は動いている。
学問とは、人類の今までの経験をまとめたもの
人間の最大の発明と言われているものは「文字」です。この「文字」によって、人間は自分の経験を後世に残すことができるようになりました。その先人たちが残してくれた経験の積み重ねが「学問」であり、「読書」なのです。
学問を修めなくても、本を読まなくても生きていくことはできます。でも、他に同様の経験をしている人がいるのに敢えて一からやってみるのと、他の人の経験を学んでからやってみるのでは、スピードや結果は全然違うものになるのではないでしょうか。だから、「勉強しなさい」「本を読みなさい」と言われてきたわけですね。
万有引力の法則を発見したニュートンも、同様の言葉を残しています。
If I have seen further, it is by standing on the shoulders of giants.
(私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩に乗っていたからです。)
さらに、その勉強したことを本当の意味で理解するには、実際に自分自身で体験することが必要、と本書には書かれています。学ぶ→体験する→理解する、というサイクルが重要になってくるのですね。
働くということは生み出すということ
人間が生きていくためには、服、食事、家をはじめ多くのものを消費しなければなりません。それらは全て、誰かが労働をして作り出してくれたものです。生み出してくれる人がいなければ、それらを楽しんだり味わったりすることはできません。
自分が消費するものよりも多くのものを生産して世に送り出している人間と、何も生産しないでただ消費ばかりしている人間では、どちらかが立派な人間か。
生産している人に対する感謝を忘れずに生きていきたいと思います。
終わりに
児童向けの漫画版でシンプルな構成ではありますが、人生において重要なこと、そうだよねと納得させられることが書かれています。たまにはこのような人生観・哲学の本も読み、自分の考え方を成長させたいですね。